追放されてからどれくらいの時間がたったのだろう。
週に一度、魂を送りに洞窟には行くけれど。
この世界から出ている時間の記憶はない。
ぎゅいぃん、とギターを鳴らすと、音が吸い込まれることもなくどこまでもどこまでも響き渡る。
別にさみしいとか、そういうわけじゃない。
壊したくてしょうがない。
俺を追放した、あの世界を。
アカギとかいうやつは、俺を利用して世界を作りかえるとか言っていた。
誰がニンゲンなんかに従うか。
壊すんだったら、俺は俺のやりたいように世界を壊したい。
向こうの世界がどうなってもいい?
そんなことを考える感情は、追放された時に奪われた。
首尾よく世界を破壊する方法?
そんなことを考える知識も、追放された時に奪われた。
唯一あるのは、行動しようと思う意思だけ。
あぁ、今日で7日か。
そろそろここを通って洞窟に行かなければ。
このタイミングは、世界を破壊する絶好のチャンス。
なのに、俺がバカなことを考えたせいであっちの世界に行くと破壊衝動は抑えられてしまう。
そのうえ、あちらの世界にいるときの記憶が一切ない。
「あぁ、めんどくせー……」
すっ、と光の方に手を伸ばし、あっちの世界に入った瞬間、“俺”の意識は途切れていった。
「……また、だ。どうしてここに……?」
魂が、叫んでいる。送らなければいけない。
なぜ洞窟にいるのか、それ以前の記憶がないまま、“僕”は琵琶を弾き始めた――。
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