「……?」
見つける小さな後ろ姿。
水色のリボンを巻いた青い髪のポニーテールの少女は、今日は一人だった。
いつものあのクフフ野郎は近くにいない。
その小さな後ろ姿が、今日はやたら小さく見えた。
心なしか、落ち込んでるようにすら見える。
あれは…きっと相手を怒らせたのか。
珍しいな。何やらかしたんだか。
俺はそっと近づく。
気配は消してはないが、向こうは気づく気配がない。
「そこのちっちゃいの」
そう言って、ぽん、と落ち込んでいる肩に手を置いた。
彼女は驚いて一瞬肩をびくつかせる。
「ちっちゃいのって言うな!……何それ?」
一応の反論をしつつ、彼女は俺の左手に持っているものに関心を向けた。
「これ?ハイビスカスっていう南国の花。綺麗でしょ?」
「……ほぁー…何か鮮やかだねー」
やはりこっちでは珍しいらしく、彼女は目をきらきらと光らせる。
だがしかし、依然声に元気はない。
好奇心が強いんですよ、パチ子さんは――そんなことをあいつは言ってたな。
あいつみたいな幼女趣味はないが、こうして見ていると表情がころころ変わって面白い。
まったく…ダイヤの原石が側にありながら何もしないって…どう考えても宝の持ち腐れ。
まぁ、俺には人生の伴侶(予定)がいるから関係ないけど?
そんなことを思いつつ、彼女の頭のリボンを取る。
リボンは単なる飾りだったようで、ほどいてもちゃんとゴムで結ってあった。
そして、その髪にハイビスカスの花を差してやる。
「?」
イマイチ状況を理解しないようで、彼女は頭を探るようにして触っている。
その光景がまだまだガキだな、と思いつつ。
俺はリボンをその小さな手に返してやって。
「うん。よく似合ってる」
「?よくわかんないけど…似合ってるの?」
「だけど……」
「……?」
「それを見せるべき相手は俺じゃないんだよね、残念なことに」
俺はそう言って頭をなでてやって。
「行ってこいよ、あいつのところに」
くるっ、と方向転換させてやって、ぽん、と背中を押した。
「な、何で!?い、嫌だよボク!」
「行ってこいって言ってんの、わかんないの?お子様通り越してバカなんじゃない?」
「バカじゃない!行けばいいんでしょ行けば!」
「あぁ、俺からのアドバイス。変な意地を張らないこと、いいな?」
「うっ……!」
パタパタと駆け出していくその小さな後ろ姿を見送って。
「ぷっ……はははっ……!!!!…計画通りっと」
俺は反対方向に歩きだした。
あの位置に差したことの意味、あいつらが知ったらどうなるかな……?
おしまい。
え?ミロパチ?違いますよ。
ちなみにハイビスカスは差す位置によって意味が異なります。
右に差すと彼氏無し・未婚
左に差すと彼氏持ち・既婚
両方に差すと婚約中
真ん中に差すと彼氏募集中
まとめた髪につけると、私をどうにでも好きにしてください
という意味になるらしいです。
どうにでもっていうのは……娼婦的な意味で。
ミロ様はいいことしたとしても、変態なことしかしません。
きっとこのあと、パチ子にスパーク、ラスさんに絶対零度食らうでしょう。
それにしてもミロ様、パチ子口説こうとしてるようにしか見えん。
ミロ様浮気じゃないです。断じて違います。
パチ子はストライクゾーン外なのです。相手にしてません。
それにミロ様はとても変態だけど一途にあの子を愛してますから。
片想いだけどね!
ライバル人間っつー時点で勝つの厳しいけどね!
PR