「ちょっと待ってて、今ポフィンあげるから」
彼女が今連れているのは、デルビルとラルトスの男の子。
どちらも知人から譲り受けた大切なポケモンである。
デルビルにはエドワード、ラルトスにはルイという名前が付けられていた。
ブリーダーの少女、ユリはポフィンを二匹に与える。
「エドワードは能天気で…ちょっと見栄っ張りなところがあるかな?」
そっとエドワードの頭をなでてやると、嬉しそうにこちらを見てくる。
それをよそに、ルイはその場を離れようとしていた。
「あっ!ルイ、勝手にどこか行っちゃダメ」
ルイがどこかに行こうとするところを追いかけて抱き寄せる。
そんなルイを見て、エドワードは自分の女に何するのか、と言わんばかりの様子で唸りを上げた。
一方、ルイはそんなエドワードを見てユリに甘えるしぐさをする。
「ルイはちょっとお調子者ねー。そのくせ意地っ張り……それと、二匹とも、仲良くね?」
ユリがぴしっと言い放つと、二匹は仲良くし始める。
ゲンキンなんだから、と思いながら、ユリはポフィンを食べる様子を眺めている。
「そろそろ…この子たちを誰かに引き取ってもらわないと……」
引き取ってから早一年。
当時はブリーダーの卵で何が何だかわかっていなかったユリも、今や全国からひっきりなしに問い合わせが来るまでになった。
拠点をシンオウに置いてはいるがそこにいることはほとんどなく、現につい先日ジョウトから帰ってきたところであった。
かつてともに殿堂入りした手持ちのポケモンたちも今ではほとんど戦うことなく、もっぱら手伝いと移動手段として働いている。
「いつまでも面倒みてるのもいいけど、こっちが手一杯になっちゃうもの」
手持ちのポケモンならまだしも、引き取って育てているのだから、いつかは誰かほかの人に渡さなければならない。
だが、知人から譲り受けた大切な二匹。
特に思い入れがあったために他人に渡せずにいた。
「誰か……任せてもいいって思える人に譲ってあげたいな」
ポフィンを美味しそうに食べる二匹を見ながら、ユリはつぶやいた。
この後すぐに、この二匹は無事引き取られることになるのだが、それはまた別の話。
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