「すいません、シンオウって……どこですか?」
彼の疑問はまずそこから始まった。
上司は呆れかえって黙ってしまう。
それから、はぁ、とため息をついて上司は地図を広げた。
「シンオウは……ここだ」
「カントーからだと遠いですね。行きたくないんですけど」
「お前、自分の立場を分かってるか?“K”?」
上司の言葉に青年の端正な顔が一瞬歪むが、それを上司に見せないまま彼は笑顔で答える。
「わかってますよ?ですけど、シンオウには先に“ハンサム”が行ってるはずでしょ?なんでわざわざ僕まで」
“ハンサム”は優秀なひとじゃないですか、と一言付け足した。
上司はにこにこ笑っている“K”を睨みつける。
「…理由を言えと?」
「はい」
「はぁ……お前は理由を話さないと行かない奴だったな、そういえば」
「理由がないのに行くのは嫌なので」
“K”が薄く微笑むと、上司は頭を抱えて話し出した。
「……ギンガ団の動きが活発になってきている」
「ギンガ団?…あぁ、ロケット団みたいな組織ですか」
「まぁ…少し違うがそんなものだ。それで、だ」
「はい」
「正直“ハンサム”だけでは手に負えないような状況になってきている。だからお前にも行ってもらいたい」
「…はぁ」
“K”はまだよくわからないといった表情をしつつ、一応返事をする。
「じゃあ何かくださいよ」
「言うと思ったから用意した。これを餞別にやろう」
そう言って上司がデスクの引出しから出したのは、あるアイテム。
「……これは?」
「お前はブーバーを持っていただろう?これはブーバーを進化させるためのアイテム・マグマブースターだ」
「――へぇ」
それを聞き、にやりと“K”は笑う。
どうやら餞別がお気に召したらしい。
「もっとも、進化させるには通信が必要だが……」
「その辺はそちらで何とかしてくれるんでしょう?」
「…そうだな。まったく、お前を動かすのには本当に金がかかる」
「失礼な。…まぁ、僕がどんなに自由にやっても咎めないのは此処ぐらいですからね。感謝してます」
「だったら早く行ってこい。事態は急を要する」
「ドラゴナの飛行能力を甘く見ないでいただきたい。どっかの四天王のカイリューなんかよりずっと速く飛べますよ」
「はいはい。じゃあ、土曜日に着くように準備してくれ」
「わかりました。それでは」
“K”は上司に一礼をし、部屋を出た。
「――まったく、グレンの破壊神の名はまだ生きていたってわけか……」
“K”が部屋を出た後、上司はそうひとりごちた。
一方、“K”はというと。
「さ、みんな…シンオウに行ってひと暴れしてこようか」
満面の笑みでベルトのモンスターボールに手をかけた。
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