あなたはいつも私の半歩先。
抱えられて怖い人たちから逃げるときは、私が少しだけ前。
あなたの隣にいられるのは、お昼寝の時だけ。
それが不満というわけでは決してなくて、むしろこんなに近くにいていいのかな、って思ったりもして。
がしがしと少しだけ乱暴だけど、優しく頭をなでてくれるその手がうれしくて。
少しだけ笑顔で返すと、照れたように目をそらす。
私がぼぅっとしてると、デコピンをしてくる。
最初はちょっと痛くて泣きそうになったけれど、それからは加減してくれるようになってあんまり痛くない。
デコピンされて、何が何だかわからなくてあなたを見ると、はぁ、とため息をついて
「ぼーっとしてんじゃねーよ。ちょっとは気をつけろ」
そう言って、また目をそらす。
「……ん」
昼寝をしていたら珍しく目が覚めた。
ぱちぱち、と数回瞬きして眠い目をこすって、隣を見るとあなたはぐっすり眠ってる。
思ったよりも距離が近くて不思議な気持ち。
「……」
いつもあなたは自分の気持ちを言葉で言って、私にもわかるようにしてくれるけど、私からは一度も言ったことがない。
まして、行動で意思表示なんてできるはずもない。
そんなこと言ったら、あなたに嫌われたりしないかな、なんて思うから。
叩かれたりしないかな、って不安になるから。
そんなことをするひとじゃないっていうのはわかるけど、だけど。
過去の傷は癒えることがないから。
「……」
あなたを起こさないように、小さく深呼吸。
できれば聞いてほしいけど、聞いてほしくないかも。
「……あなたが、いちばんだいすき、です」
少しぶっきらぼうだけど、優しいその態度が。
コンテストで魅せるそのたくましさが。
いつも半歩先を歩くあなたが。
一緒に昼寝をしてくれるあなたが。
まだまだ私の知らないあなたの一面があるかもしれないけれど、それを知ったとしても嫌いにはならないから。
嫌いになれるわけがないから。
態度がわからなくて心配させてしまうだろうけど、今は勇気がないだけだから。
いつか、ちゃんとあなたの目を見て「だいすき」って言うから、だから。
それまでもう少しだけ、待っててください。
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