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2025/05/10 17 : 42
CATEGORY : [SS]
マヤやんが狂気の少女になるところだったので原点に立ち返る企画。
そして過去投稿その4です。

「マヤちゃん、紹介するね。僕のお友達のヒコルだよ」

そう言って知り合いのヤタさんが紹介したのは、私の大嫌いな格闘タイプのひとだった。

「ヒコル、僕の知り合いのマヤちゃん。仲よくしてあげてね」

にっこりと笑って話を進めるヤタさん。
私にとっては笑えない問題だ。
格闘タイプは苦手っていうの知ってるはずなのに。

ちら、と相手を見たら、ぱち、と目が合った。
けれど怖くてすぐに目をそらした。

「ヤター、今からナギサ行くって、飛ぶ準備しなさいよね!」
「あ、うんわかったー…こほっ…ちょっと僕用事あるから、帰ってくるまで二人で何か話して待っててー」
「え、おいお前っ…」
「あ…あの」

それじゃあね、と言って、ヤタさんはクルミちゃんのあとを追って行ってしまった。

突如、二人きり。

「……」
「……」

沈黙が痛い。
というより、このひとと一緒にいるのが怖い。
何かされるんじゃないだろうか。
そう思うともう相手の顔なんて見れなかった。

「何なんだよあいつ……」

ぶつぶつ言って近づいてくる。
怖くて足がすくんで動かない。
体が震える。のどを圧迫されるような感じがして声が出せない。

「…まぁ、そんなわけで…オレはヒコル。よろしくな」

そう言って手を出してくる。
その手がどこへ向かうのか、怖い。
たたかれるのかな、きっと立ち上がれなくなるくらいたたかれるんだ。
意識がなくなるまでたたかれるんだ。
今でも忘れられない、あの日のように。

怖い、怖い、怖い、怖い――。

「――っ何でも、するから……た…たたかないで……っ!!!!」

出ない声を振り絞って、手で頭をかばうようにして私は言った。
ぎゅっと目をつぶって、どんなに痛くても耐えられるように。
はめてる白い手袋は、人を傷つけないためじゃなくて自分を守るためなんだ。

けれど、いつまでたっても痛い感じはしなくて。

おずおずと目を開いて顔を上げると、そこには少し驚いた表情できょとんとしていた彼の姿があった。
彼の行き場のない手は、私の目線を越えて。

「……たたかねーよ」

そう言って、ぽんぽんと私の頭を帽子の上から撫でてきた。

「ご、ごめ、なさ…」
「ごめんでもねーし」

はぁ、とため息をつく。
そのため息がやっぱり怖くて少しびくっとした。

「つーかお前……」

撫でた手を離して、彼は言う。

「すんげー眠そうじゃねーか」
「……?」

確かに、私は夜行性だから昼間は眠いけれど。

「あいつ帰ってくるまで何もすることねーし、寝て待ってよーぜ」
「…え」
「あの木の下、涼しくて寝るのに最適で…お前も来いよ」

彼はさっさと行ってしまう。

「あ、えと…」

私はついていくしかなかった。
歩幅がせまい私は追い付くまでに少し時間がかかった。

着いた場所は木陰がいい具合に涼しくて、風通しがいい場所だった。

「な、涼しいだろ?」

ふぁ、とあくび一つ、その直後に彼は寝てしまう。

「あ、あの…」
「……」

私の声が小さかったのか、それとも聞きたくなかったのか、本当に寝てしまったのかはわからないが、反応はない。
ヤタさんのお友達さんだから、そのまま逃げるわけにもいかないし、どうしようもなかった。
仕方なく少し距離を置いて私も座ってみた。
風が涼しい。
時折入る日差しもぽかぽかしている。
そのままうとうとして、寝てしまった。


「けほっ…ごめんね、いきなり席外して――って」

黒い帽子の仲人は、大きな木の下で寝ている親友と知り合いを見て言う。

「やっぱり僕の思ったとおり、仲良くなれそうだね」

満足そうにして黒い帽子の仲人は微笑んだ。
しかし、そののちこのことを後悔することになるとは、彼は知る由もなかった――。
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2008/05/10 00 : 04
こめんと [ 0 ]
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