連れて行かれたところは案の定王宮だった。
華美な装飾と荘厳な雰囲気に圧倒される。
「こちらです」
そう言われて大きな扉を開けられる。
目の前に広がるのは、大きな広間と、上段にぽつりと置かれた椅子。
持っていた鏡で椅子を映し出すと、そこにはおかしな格好をさせられた私が座っていた。
隣には、今私を案内してきた王宮の者。
「おぉ、本当に宙を浮いていらっしゃる!」
「あなたこそ、我らがずっと探していた救世主!」
広間にいた者皆が私のことを見、口々に言う。
「ささ、あちらの椅子にお座りください」
一人の年老いた文官が私をあの椅子へ案内する。
私はされるがままに座らされた。
「今ここに、新たなる予言者が現れた!」
「おぉーっ!!」
私を椅子に案内した文官が声を発すると、広間にいた者全員から歓声が上がる。
「今日からこの地を統治するのはマツリ様だ!皆の者、マツリ様の予言に従いなさい!」
……なぜ私が未来を見ることができるということを知っている?
……なぜ、私の名前を知っている――?
「……」
「マツリ様、あの方は心を読むことができるのです」
私を王宮まで案内した者が話しかけてくる。
「……あの」
「申し遅れてしまいました。私の名前はカムイ。王宮に勤める武官です。これからマツリ様をお守りさせていただきます」
カムイと名乗った目の前の王宮の者は、ひざまずいて恭しく挨拶をした。
「カムイ……私は…マツリだ」
「ではマツリ様、よろしくお願いいたします」
未来を映す鏡は、先ほどとは違い、何も映していなかった――。
PR